デザイナーの仕事の境界は、AIでどこまで広がるのか
「デザイナーがAIを使う」と聞くと、ビジュアル制作を効率化するためのもの、というイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。
ですが実際の現場でAIを使い続けていると、便利になった以上の変化に気づきます。
それは、これまで「自分にはできない」と思っていた領域にまで、少しずつ手が届くようになったことです。
今回は、当社のデザイナーが実際の制作現場でAIをどのように活用し、仕事の幅がどのように広がったのかを、実際のプロジェクトを交えてご紹介します。 普段からデザイン制作だけでなく、Webサイトの保守・更新やバナー作成、コーディング、CMSの構築、クライアント対応まで幅広く担当している中で、AIがどのように業務の幅を広げてくれているのかをお伝えします。
これからデザイン制作を依頼される方や、AI活用に興味のある方の参考になれば幸いです。
いつもの制作フローの中で

デザイン構成の検討段階では、ChatGPTやClaudeを「壁打ち相手」として使うことが増えました。
ある業界団体様のサイトでは、災害時の緊急作業に関する情報ページの構成を見直す際、既存ページの課題や情報の見せ方についてAIと対話しながら改善案を洗い出し、ページデザイン案の作成やコーディングまで一連の流れでAIを活用しました。
ひとりで考えると視野が狭くなりがちな構成の検討も、複数の切り口から洗い出せるようになり、ご提案までのスピードが上がっています。
スピードより、「楽になった」ビジュアル案づくり
バナー制作では、クライアントから内容の原稿だけをいただき、テイストも含めてゼロから方向性を決める案件も少なくありません。
情報の整理、レイアウトの検討、フォントや画像の選定、配色、最終調整と工程は多岐にわたりますが、なかでも一番負荷が大きかったのは、構成やテイストの方向性を決める最初の動き出しの部分でした。複数案を比較したいというご要望をいただくと、その負荷がそのまま案の数だけ積み上がるので、正直重めの作業でした。
今は、載せたい情報を伝えるだけでAIがラフな初案を作ってくれます。
たとえばあるクライアント様の新規告知ページ作成では、スライダー用ビジュアルの初案をChatGPTで生成し、そこからディレクションをして調整したり、テイストの異なる案をいくつか作らせてクライアントに方向性を確認していただき、決まった内容を編集用データに作り変えて、最後は人の手で仕上げる、という流れで進められました。
作業全体が劇的に速くなったというよりは、一番重い作業であった「ゼロから複数の方向性を生み出す」部分の負荷が減って、気持ち的にかなり楽になった、というのが実感に近いです。

今まで手が届かなかった領域へ、ただし範囲は見極めて
大きな変化があったのは、実装まわりです。
VSCode上のClaude拡張機能を使った「バイブコーディング」を取り入れてから、これまで自分では書けなかったJavaScriptの調整やカスタマイズにも、自分の手で対応できるようになりました。
前述の業界団体様のサイトでは、Movable TypeのData APIを使ったキャッシュクリア処理のJavaScriptの設定を、AIと一緒に組み立てながら実装しました。 以前であれば実装をエンジニアに依頼していたような場面でも、自分たちの手で対応できる幅が広がっています。
ただし、これはどんな内容でも構わずAIに任せているわけではありません。
知識のない領域をAIにそのまま任せてしまうことは、いわば責任の放棄になってしまうと考えています。
そのため実際に手を動かす範囲は、影響が限定的でリスクの低い処理に絞っています。
たとえば先述のキャッシュクリアも、データベースの内容を書き換えるような処理ではなく、すでに登録されているデータを参照する程度の使用であり、セキュリティ上の問題につながるような領域には踏み込んでいません。 フロントエンドの表現や、HTML・CSSだけでは実現できない挙動の調整を軸としながら、こうした基準で任せる範囲を判断しています。
コーディングやCMSの構築そのものは、AIが登場する以前から自分で行ってきた業務です。
だからこそコードを読んで内容を理解でき、AIが書いたコードにおかしな書き方や気になる点があれば、その場で指摘・修正できます。
「AIに任せても大丈夫」と判断できる範囲があるからこそ、安心して活用範囲を広げられている、というのが実感です。

それでも、AIには任せられないもの
AIは発想の幅を広げ、これまで手が届かなかった実装領域にも連れて行ってくれます。
ただし、AIが出したものをそのまま採用することはほとんどありません。
たとえばLPのようなページ全体の生成では、パッと見の第一印象は悪くなくても、使い続けるうちに生成の「パターン」が見えてきて、オリジナリティのない単調な仕上がりになりがちです。
ビジュアル単体の生成も、以前よりかなり高いクオリティで出せるようになりましたが、日本語のテキスト表現が不自然だったり、要素間の統一感が取れていなかったり、余白の取り方が不十分だったりすることが多く、読みやすさやわかりやすさといった人の感覚に基づく部分では、まだ人の手による調整が欠かせません。
実装面でも、AIに任せきりにできない場面があります。
以前、作成したデザイン画像をもとにコーディングを依頼した際、本来は重なり合う2つの大きな図形として表現していたはずの部分が、細かく分割されたバラバラな図形の集合として組み上げられてしまい、意図した見え方とは異なる実装になったことがありました。コードを読んで構造を理解できたからこそ、この問題に気づいて調整することができました。
CMSまわりの実装方法についてAIに質問した際も、もっともらしい回答が返ってきたものの、実際に確認すると「そのようなタグは存在しない」といった誤りが含まれていることが少なくありませんでした。
特にMovable Typeのように国内向けのCMSは、AIが学習している情報量自体が少ないためか、こうした誤情報が起きやすい印象があります。
鵜呑みにして実装していれば、原因究明のための余計な手戻りが発生していたはずです。
また、AIが最初に提示してきた実装方法をそのまま採用するのではなく、「もっとリスクの低い方法はないか」「もっと簡単に実現できないか」と別の切り口を提示しながら、より良い方法にブラッシュアップしていくやり取りも日常的に行っています。
こうした経験から、AIに検証や判断を任せられないと感じる理由は、主に次の3つに集約されると考えています。
- お客様の課題に対して、本質的な解決になっているか
- そのプロジェクトやブランドに本当に合うのはどの案か
- 実装した内容が、意図した通りに正しく動いているか
こうした判断や検証は、AIではなく私たちが担っています。
AIはあくまで思考とスピードを補助する道具であり、「誰のために、何を、なぜつくるのか」を考え抜き、その結果に責任を持つのは、これからも変わらず人の仕事だと考えています。

おわりに
AIを取り入れたことで、私たちデザイナーの仕事の境界は少しずつ広がっています。
ビジュアル案づくりや構成の壁打ちはもちろん、これまでエンジニアに頼るしかなかった実装の一部にも、知識と責任の範囲を見極めながら自分たちの手で対応できる幅が生まれました。
こうしたAI活用によって、より柔軟でスピード感のあるご提案が可能になっています。
デザインやサイト制作でお困りのことがあれば、ぜひ株式会社florbitalにお気軽にご相談ください。
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