【Copilot Studio事例】業務で使えるAIエージェントを作って分かったこと
はじめに
最近、「AIエージェント」という言葉をよく聞くようになりました。 恥ずかしながら、僕は実際に触ってみるまで、あまりどういったものなのかピンときていませんでした。 所感としては、「ChatGPTやClaude(以下、生成AI)があるのに、わざわざ"エージェント"を開発するのはどういうメリットがあるんだろう」といった感じです。
でも、実際に業務で使えるレベルのAIエージェントを作ろうとしてみると、その印象はかなり変わりました。 AIエージェントは、"会話する仕組み"というより、"目的に向かって仕事を進める仕組み"に近いと感じています。
この記事では、生成AIとAIエージェントの違いを整理しながら、AIエージェントがどのような業務価値を持ち、開発する上で何が大事なのかを、実体験ベースでお伝えしたいと思います。
生成AIとAIエージェント、何が違うのか
生成AIとAIエージェントは似ているようで、役割が少し違います。 ひとことで言えば、生成AIは「答えるAI」、AIエージェントは「進めるAI」 です。
生成AIは、基本的には質問に答える仕組みです。 Webやナレッジベースから関連情報を引っ張ってきたり、文章を整えたり、要約したりするのが得意です。 これはこれで十分便利で、実際に役立つ場面も多くあります。 ただ、あくまで中心にあるのは「応答」です。
一方で、AIエージェントは発想の置きどころが少し違います。 中心にあるのは「返答」ではなく、「ゴールに向かって何をするか」です。 まずは、その違いを表で見ると分かりやすいです。

AIエージェントは、「目的」を軸に行動します。
たとえば社内システムに 「この案件について、来週中に提案書を提出したい」 と依頼したとしましょう。 生成AIの場合、 「提案書の構成案を作成しました。まずはこの流れで書くとよさそうです」 といったように、構成案や文章のたたき台を返してくれることが一般的です。 書き始めは楽になりますが、その後の確認や調整、関係者とのやり取りは人間が担う必要があります。 これに対して、AIエージェントは提案書作成のプロセス全体を自律的に進めます。 CRMを参照して顧客の過去履歴を確認し、類似案件の提案書を洗い出したうえで、今回の案件に適した構成を組み立てる。 さらに、担当営業のスケジュールを確認して社内レビューの日程を調整し、承認フローに沿って関係者へ確認依頼を送付します。 このように、単に答えを提示するのではなく、目的達成に必要な手順を自らつなぎ、継続的にタスクを前に進めていく点がAIエージェントの大きな特徴です。
生成AIが「聞かれたことに答える窓口」だとすれば、AIエージェントは「ゴールを共有して一緒に前へ進める同僚」に近い存在です。
AIエージェントはどんなビジネスで価値を出すのか
作っていて感じたのは、AIエージェントが得意なのは、情報の解釈や判断が多く、かつ手順や関係者が複雑に絡む業務だということです。 単なる「FAQの検索係」ではなく、「判断が必要なルーチンワーク」こそが主戦場だと感じています。
ここでは、会社の経費精算を例に考えてみます。 経費精算は一見すると単純な事務処理に見えますが、実際には人の判断が多く入り込む業務です。
- 領収書が不鮮明で、金額や日付が読み取れない
- 同じ領収書を二重で申請していないか確認が必要
- 規程上グレーな支出があり、費目判断に迷う
- 金額や費目によって承認経路が分岐する
つまり、経費精算は「人が都度判断している業務」だと言えます。 AIエージェントを入れる価値は、この判断負荷を引き受けられる点にあります。
AIエージェントを入れたときの変化を整理すると次の通りです。

具体的には、AIエージェントは次のような役割を担えます。
- 領収書を読み取り、費目候補とその根拠を提示する
- 社内規程と照合し、差戻しが必要かどうかを判断する
- 金額やケースに応じて承認フローを起票する
- 誰が、いつ、何を承認したかを記録として残す
要するに、AIエージェントの価値は、単に情報を探して答えることではありません。 情報を読み取り、規程と照らし合わせ、判断し、次の処理につなげることにあります。
こうした「判断が必要なルーチンワーク」が多い業務ほど、AIエージェントは大きな価値を出しやすいと考えています。
作ってみて感じたこと―出来たものの価値と開発の難しさ
ここまで生成AIとAIエージェントの違いを書いてきましたが、Copilot Studioで実際にエージェントを組んでみて、まず実感したのは「人が関与しなくても業務が前に進む」ことのインパクトの大きさでした。
生成AIは「聞けば答えてくれる便利な相談相手」ですが、行動するのは結局人間です。回答を読み、判断し、次のステップを自分で実行する必要があります。 一方、今回作ったAIエージェントは、情報の取得からデータの更新、関係者への通知まで一連の流れを自律的に処理します。つまり、人が間に入らなくても業務が一歩先に進む。この違いは大きく、定型的な確認・転記・連絡といった作業が自動化されることで、担当者が本来集中すべき判断や企画に時間を使えるようになる手応えがありました。
ただし、印象が一番変わったのはその先です。 AIエージェントは「答える仕組み」ではなく、「正しく動かす仕組み」として考えないと成立しないという点でした。
生成AIであれば、多少曖昧な回答が返ってきても会話としては成立します。 でも、AIエージェントは業務の中で実際に処理を進める以上、そうはいきません。 データの更新、通知の送信、次のアクションの判断まで任せるなら、誤りはそのまま業務事故につながります。
そのため、開発で本当に難しかったのは、どうすれば安全に、安定して動かせるかを設計することでした。 どこまで権限を与えるのか、迷ったときにどう人にエスカレーションさせるのか、例外が起きたときにどこで止めるのか。こうしたガードレールを詰める作業のほうが、むしろ本質だったように思います。
さらに実感したのは、1つのエージェントに判断・実行・確認をまとめて任せると、品質が安定しにくいということです。 それっぽく動いているように見えても、自分の判断を自分で正しいことにして、そのまま進めてしまいやすい。だからこそ、役割を分けて相互にチェックさせるマルチエージェント的な設計のほうが、結果として品質を作りやすいのだと思います。
結局、AIエージェント導入の本質は、プロンプトを書くことだけではなく、業務・権限・データの流れを整理し、品質を担保できる構造を設計することにある。実際に作ってみて、そんなことを強く感じました。
最後に
AIエージェント導入の本質は、「チャットを賢くすること」ではなく、「業務を安全に前へ進める構造を作ること」にあると感じています。
もしこの記事を読んで、「この業務にAIエージェントを導入するとどうなるのか」と考えている方がいれば、まずは次の順番で整理してみるのがよいと思います。
- 業務要件をざっくり整理する
- 実装可能性を専門家と一緒に検討する
- 小さくプロトタイプを作ってみる
大切なのは、いきなり大きく始めることではなく、「どの業務に」「どこまで任せ」「どこで人が判断するのか」を見極めることです。
「こういう業務があるのだけれど、AIエージェントで対応できるのか」
「こういう体制や制約がある中で、どう設計すればよいのか」
そうした疑問があるなら、一度具体的に整理してみるだけでも進み方はかなり変わります。
弊社では、この記事で触れたようなCopilot Studioでのエージェント開発を中心に、提案から実装、内製化の支援まで行っています。
直近ではCopilot Studioの初心者向け研修も始めました。 https://power-education.info/copilot-studio-intro.html
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